家族の交流を「動線」によって生み出す。

 つまり住宅に「寄り道の原理」を導入しようと考えました。

 通勤・通学を考えたとき、「行き」はひたすら目的地に向かうことでしょう。
 しかし、「帰り」はどうでしょうか。家に帰る前に本屋に寄ったり、レンタルビデオ屋に寄る機会が多いのではないでしょうか。
  まさに時間がゆとりある「帰り」に寄り道が発生する可能性が高い。
 この寄り道の原理を動線計画に組み込み、寄り道によって家族の交流を生み出そうという提案です。
 具体的には水回り、トイレ、お風呂など、必ず行かなければならないコア空間を分散させることで、まずは「行き」を生み出します。そして「帰り」に絶対通る場所に家族の団らんの場所を設けます。
 子供が自分の部屋からトイレに行く。そして部屋に戻る途中、家族のいるリビングルームを通る。親から声をかけられ少し話しをしてから自分の部屋に戻る。

 これが寄り道「動線」によって生み出された家族の交流です。

 発想は本当に単純。自分が風呂あがりにちょっと親と話していたときに、こういう何気ない会話が大切だったりするのではないかと思って設計したのです。

 とはいえ、無理矢理、家族を交流をさせるような建築家のエゴ満載の提案にはしたくなかったんです。構想したってそんなもの実現するわけがありませんから。
 「帰り」道に家族の交流スペースがあったら、ちょっと寄り道ができる、そういう選択ができる。単に選択権を用意しただけです。

 その選択権を使うも使わないも住人次第。

 建築家のできることって選択権の範疇を超えないのだと思います。